小説家から学ぶ表現、描写

小説を書くための表現方法を小説家から学ぶ

感情 「悲しみ」

小説の表現、描写
「悲しみ」

クライマーズ・ハイ 横山秀夫

 上司のメッキが剥がれるたび、悠木の心はささくれ立ったものだった。失望は大きく、それは後々まで尾を引いた。


虹の岬の喫茶店 森沢明夫

 わたしは、湿っぽいため息を漏らした。祥子のことを憶うと、いつもこんなため息をついてしまうのだ。


友罪 薬丸岳

 あんたー という言葉を聞いて、漏れそうになる溜め息を必死に押し留めた。


たまちゃんのおつかい便 森沢明夫

 押し入れの端っこに、母の遺影が無造作に押し込まれているのを見つけたときだけは、胸の奥の泉から熱っぽい感情がこんこんと涌き出てきて、ひとり泣きそうになったのを覚えている。


たまちゃんのおつかい便 森沢明夫

 やるせないような思いが胸の辺りからじわじわと広がって、お腹の底まで侵食されそうな気がした。


たまちゃんのおつかい便 森沢明夫

 そのまま、何も言わない母の顔を眺めていたら、胸のなかに、ひんやりとした黒い霧のような感情が渦巻きはじめて、それが荒っぽい潮騒と混じり合い、みるみる膨れ上がり、喉の奥からこみ上げていた。


たまちゃんのおつかい便 森沢明夫

 わたしは、ほぼ泣きっぱなしだった。しずくをこぼせばこぼすほどに、心がその分だけ乾いた空洞みたいになって、葬儀が終わる頃には、もはや脱け殻だった。


刑事のまなざし 薬丸岳

 ナカさんが死んだらどうなるのだろうか。雅之以外の誰にも知られることなく、無縁仏としてひっそりと葬られることになるのだろうか。
 雅之は漏れそうになる溜め息を必死に押し留めた。


刑事のまなざし 薬丸岳

 その言葉ひとつひとつが身を切るような痛みとなって突き刺さってきた。


刑事のまなざし 薬丸岳

 そのことが有香の心に暗い影を落としているのだろうと久美子は思った。