小説家から学ぶ表現、描写

小説を書くための表現方法を小説家から学ぶ

風景表現「室内」

小説の表現、描写
「室内」

 自分の靴音だけが反響するがらんどうの廊下を抜け、食堂に入ると、天窓のある窓際の席に白いTシャツ姿の若い女性が座っていた。

(クライマーズ・ハイ 横山秀夫)



 古いアパートである。体重をかけすぎると、壁全体がみしっと軋む。建付の悪い窓の外からは、今にも壊れそうな洗濯機の音が聞こえてくる。
(十角館の殺人 綾辻行人)

 つやつやと飴色に光る年季の入った廊下と階段は薄暗くて、家のなかは静まり返っていた。
(ヒカルの卵 森沢明夫)

 畳三畳ほどの空間だった。窓はあるもののすぐ向こうは建物なのだろう、部屋は薄暗い。主人が明かりを点けると勅使河原は少し腰をかがめながら中に入る。カビの匂いが鼻を突いた。壁紙の一部がはがれ、むき出しになったコンクリートにシミが浮き出ていた。
(逆流 田中経一)

罪の声 塩田武士
 キュルキュルと音がする引き出しから大きな紙袋を二つ取り出して、応接室のデスクに戻ってきた。

 この和室を見た俊也は、部屋自体が長年の生活に疲れているように感じた。

 ヤニで汚れた壁紙の右端が剥がれ、暖房の風を受けて揺れている。

「西華楼」の看板がかかる粗末な平屋建て。店前のカゴ付き自転車や室外機の配管に掛かっている傘が、いかにも庶民的で親しみを覚える。