小説家から学ぶ表現、描写

小説を書くための表現方法を小説家から学ぶ

風景表現「建物」

小説の表現、描写
「建物」

ヒカルの卵 森沢明夫
 ぼくは、ひとり大通りに面した焦げ茶色のビルを見上げた。親父の会社の持ちビルだ。直線と直角で造られたコンクリートの建造物は、田舎者をはねつける冷たいオーラを放っている気がした。そして、その上の空が、悲しいくらいに狭かった。

歪んだ蝸牛 田中経一
 五味は、赤坂にある外堀通り沿いの巨大なビルのたもとに立っていた。ビルを覆い尽くす反射ガラスが、雲の少ない五月の青空を鮮やかに映し出している。

女神のタクト 塩田武士
 一見して三階建てのようだ。正面には幅広い石の階段があり、短い距離を上がると、大きな扉が二ヵ所ある。時の経過が刻まれているが、少しも古びていない。軽装では立ち入れないような厳格なオーラがあった。

父からの手紙 小杉健治
入居者募集の文字の薄くなった看板が空き室が多いことを物語っている。

塀から松の枝を伸ばした瀟洒(しょうしゃ)な家だ。

罪の声 塩田武士
 錆びたトタン屋根がついた外付け階段のアパート。