小説家から学ぶ表現、描写

小説を書くための表現方法を小説家から学ぶ

風景表現「風」「空気」

小説の表現、描写
「風」「空気」

クライマーズ・ハイ 横山秀夫
 喧騒は相変わらずだが、殺気だったところがない。昨日まで部屋中を包んでいた、ヒリヒリとするような乾いた空気が、微かだが湿りけを含んでいるようにも感じられる。


クライマーズ・ハイ 横山秀夫
 昼間、容赦のない陽射しに晒され続けた空気は、どこにも逃げ場がないのか、この時間になっても重たいガスのごとく辺り一面に垂れ込めていた。


十角館の殺人 綾辻行人
 夕暮れにさしかかり、十角館のホールには薄闇が滲んでいる。


十角館の殺人 綾辻行人
 風が一陣、夕暮れの香りを運んできた。


ヒカルの卵 森沢明夫
 俺は、夕照に染まった赤い風を胸いっぱいに吸い込んだ。そして、もの言わぬ故郷を一望しながらつぶやいた。


ヒカルの卵 森沢明夫
 今宵は少し風が吹いていた。でも鼻の奥がつんとするような冷たい夜気のどこかに沈丁花の甘い香りが溶けていて、なんだか少し優しい気分になる。
 ジャンパーの襟を立てて、脚を早めた。


ヒカルの卵 森沢明夫
 やわらかな風と一緒に、カナカナカナ……と、蜩(ひぐらし)の哀歌が流れ込んでくると、私は少年時代の夏休みの匂いを思い出して、胸の奥が甘く痛んだ。

ヒカルの卵 森沢明夫
 身の引き締まるような風には森の腐葉土の匂いが溶け込み、山も川も、どこかひっそりとしている。


ヒカルの卵 森沢明夫
 斜面を駆け上がってきた夜風が、わたしの首筋を心地よく撫でて、ついでに頭にかぶったバンダナの結び目の尻尾を振るわせた。

虹の岬の喫茶店 森沢明夫
 遥か崖の下から、磯の香りをはらんだ海風がふわっと吹き上がってきた。

虹の岬の喫茶店 森沢明夫
 時折、崖の下から吹き上がってくるのは凍ったやすりのような海風で、私たちの頬をチリチリとこすっていく。

津軽百年食堂 森沢明夫
 北風が吹き、ペンキのはげかけた木枠の窓がカタカタと鳴った。すきま風がすぅっと忍び込んできて、哲夫の首筋をなでる。思わず着ていたどてらの襟を合わせて、ブルッと身震いした。

津軽百年食堂 森沢明夫
 津軽に吹く冬の風は、金属質でずっしりと重く、じわじわと骨の髄にまでしみてくる。

津軽百年食堂 森沢明夫
 窓を開けた。すうっと流れ込んできた空気は、ひたひたに水分を含んでいて、首筋にひんやりとまとわりついた。少し埃っぽいような雨の匂いを大きく吸い込む。

キッチン風見鶏 森沢明夫
 広々とした港の公園に、初夏の風が吹いた。
木陰のベンチに腰掛けているぼくの頭上からは、さらら、さらら、と若葉の葉擦(はず)れの音が降ってくる。

キッチン風見鶏 森沢明夫
店を出ると、しっとりとした夜風がまとわりついていた。

キッチン風見鶏 森沢明夫
 ふわりと風が吹いた。
その風は、寿々さんの髪の匂いを運んできた。


キッチン風見鶏 森沢明夫
 南風は庭のハーブを揺らし、ぼくと勉さんの頬を心地よく撫でていく。


キッチン風見鶏 森沢明夫
 夏の光の粒子をいっぱいにはらませた風が吹いた。


たまちゃんのおつかい便 森沢明夫
 海側の窓を開けて網戸にした。生暖かい風が透明な塊になって吹き込んでくる。生成りのカーテンがはたはたと揺れた。

夏美のホタル 森沢明夫
窓から忍び込んでくる風は、ぼくらの産毛をさらりとなでていった。幽かに秋の匂いをはらんだ切ない感触の風だった。

夏美のホタル 森沢明夫
 冬枯れの森のなかから、土の匂いのする冷たい風が吹いてきた。

歪んだ蝸牛 田中経一
 雲も見当たらない青空の下、初夏の穏やかな風が感じられた。木々に囲まれ、芝生が綺麗に敷き詰められており、入院患者たちが散歩を楽しんでいる。

ミーコの宝箱 森沢明夫
 外には背筋が伸びるような師走の風が吹いていた。

 さわさわと生暖かい風が吹いて、僕のマフラーとミーコの黒髪を揺らした。

 師走の夜風がぶつかってきた。耳たぶを刺すような風だが、むしろ今夜はそれが心地よくもあった。


罪の声 塩田武士
 同じビルだが、流れている空気は大阪と屋久島ほどの差がある。