小説家から学ぶ表現、描写

小説を書くための表現方法を小説家から学ぶ

「笑顔」のまま固まっていた頬の筋肉も、……

大事なことほど小声でささやく 森沢明夫

「あ、ええと」
「なに?」
「いや……。トレーニングの後のビールは最高なんだよな」
「それだけ?」
「うん」
「じゃあ」
「うん、ありがとね。おやすみ」
 後ろ手にリビングのドアを閉める由佳の痩せた背中を見詰めたまま、四海はこの日最後のマシンガントークを放った。
 バタン。
 ドアが閉まると同時に、マシンガンの弾が切れた。
 ひとり取り残された四海の口から、短いため息が漏れる。「笑顔」のまま固まっていた頬の筋肉も、じわじわと緩んでいくようだった。